術後は高血糖になってキケン!?術前の血糖コントロールと手術当日のケアについて

こんにちは、看護技術の記事を担当している元看護師のTOMOです。

今回は、術前の血糖コントロールと手術当日のケアについてについてお伝えします。

最近では糖尿病の既往を持った患者さんも多く、その中でも手術を受けられる人も増えています。

血糖コントロール不良の患者さんは、手術がハイリスクになってしまうため、術前から時間をかけてコントロールを行います。

術前の血糖コントロールは患者さんへの指導も必要になるため、しっかり理解しておく事が大切です。

患者さんに協力してもらうためには、分かりやすく根拠を丁寧に説明する事がポイントです!

術前の血糖コントロールの目的

手術前に高血糖状態が続いてしまうと創傷治癒が遅れてしまい、術後の経過に影響してしまうため

手術前の血糖異常の原因

手術前における血糖異常の原因は以下の通りです。

  • 基礎疾患に糖尿病があり、血糖コントロールが不良で高血糖状態にある
  • 重症外傷によるストレス
  • がんや感染症による影響

これらが血糖異常の原因になりますが、糖尿病以外の要因でも高血糖は引き起こされるため、患者さんの全体像を把握しておくことが大切です。

術前の血糖コントロールの方法

高血糖状態が続いてしまうと手術が実施されない場合もあるので、血糖コントロールを行い血糖値を安定させることが非常に大切です。

コントロールが良好な場合とコントロールが不良な場合のそれぞれのパターンを見ていきましょう。

コントロールが良好な場合

コントロールが良好な患者さんの場合は、内服薬でのコントロールがメインになってくるので、前日までは内服してもらいます。

必ず術前指示がドクターから出るので確認してから行いましょう。

ただし、SU薬(アマリール)ビグアナイド薬(メトホルミン)を服用している患者さんの場合は、手術2日前から中止してインスリン注射に切り替える事が多いです。

これらの薬剤は長時間作用し、絶食時や手術侵襲によって術後に乳酸アシドーシスを起こすリスクがあるため直前に切り替えます。

内服薬の患者さんがインスリン指示に切り替わる時はこれらの理由なので理解しておきましょう。

コントロールが不良な場合

病院にもよりますが手術の1週間前から入院を行い、インスリン注射に切り替えてコントロールを行います。

コントロールの目安は以下の通りです。

  • 140㎎/dl未満(空腹時)
  • HbA1cは7.5%以下

これらが手術前の糖尿病患者さんの血糖コントロールへの対応ですが、ここでのポイントは血糖コントロールと同時に患者さんへの指導も行いましょう

血糖コントロールは患者さんの協力がなければ安定が難しいので、間食や糖分が入ったジュースは控えるなどの説明を行い理解を得ることが大切です。

患者さんの中には血糖コントロールによる食事制限にストレスを感じて、家族にお菓子などを持ってきてもらい、病室でこっそり食べてしまうというケースも。

現場を見つけた時は食事制限の必要性を伝え理解してもらうように対応します。

担当看護師が伝えても理解してもらえない場合は、先輩、主任や師長に相談して対応してもらいましょう

手術前日のケア

手術前日の血糖コントロールとケアは以下の通りです。

術前の絶食時間を把握しておく

手術前日は手術時間により絶食時間が異なる場合があります。

午前中の手術であれば夕食から絶飲食、午後の手術であれば当日の朝から絶飲食など患者さんによって違うため把握しておきましょう。

夕食から絶食の場合は15時くらいから血糖コントロールを行う

夕食以降絶食指示の場合は15時くらいから血糖コントロールを行い、必要があればドクターの指示に従ってインスリンの皮下注射を行います。

低血糖症状に気を付ける

絶飲食になると低血糖を起こす患者さんもいるため、就寝前にも血糖測定を行い低血糖症状が起きていないか観察を行います。

低血糖症状がみられた場合はドクターの指示に従って対応します。

手術当日のケア

手術当日のケアは以下の通りです。

  • 当日の朝血糖測定を行う
  • 出棟前バイタルの時も血糖測定を行う
  • 指示があればインスリン注射を手術室へ持参する

手術出棟前のバイタルサイン測定の時に忘れずに血糖測定を行います

術前の血糖コントロールの観察項目

絶飲食の時間

手術前日の絶飲食開始時間

低血糖症状

血糖値、気分不良の訴え、冷汗など

術前の血糖コントロールのポイント

出棟前の血糖値は手術中の血糖コントロールにも影響するため、必ず測定を行い申し送りましょう。

長時間の開腹手術の時は、頻回な血糖測定と綿密な血糖コントロールを行うため、本人の使用しているインスリンを持参する指示が出されることもあります。

また、血糖コントロールが不良の患者さんの場合は、手術当日であっても血糖値の数値によっては、インスリンの投与の指示が出される事があります。

私も新人の頃は、術前に高血糖の患者さんと遭遇して慌ててしまった経験があります。

異常が見られたら慌てずにすぐに主治医に報告をしましょう!

手術前の血糖コントロールを理解するために

手術前の糖尿病の患者さんの血糖コントロールは、術後の経過にも影響するので非常に大切です。

高血糖のまま経過してしまうと感染のリスクも高くなり術後の回復が遅れてしまうことも考えらられます。

血糖コントロールは患者さん本人の協力も必要になってくるため、納得してもらえるよう指導を行い、協力してもらいましょう。

患者さん本人の協力だけでなく、家族も巻き込んで協力してもらう環境を作る事が大切です。

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★TOMO★

★TOMO★

看護学校卒業後は手術室で勤務。その後急性期病棟での看護を経験。現場の看護師不足の問題に直面し、看護師の採用に携わりたいと求人広告業界で営業として勤務。現在はPC1台で仕事をするため、看護師ライターを中心に活動。手術室で働く看護師を応援するため、webサイトで自身の経験を元に情報を発信している。https://openasnurse.com/