こんにちは、看護技術の記事を担当している元看護師のTOMOです。
今回は、正しい輸血を行うポイント3つについてお伝えします。
入院している患者さんの中には、治療内容によって輸血が必要になることがあります。
輸血はすぐに実施できるものではなく、いくつもの検査を実施してから輸血を行うことができます。
輸血の扱いには自信がない新人看護師も多いと思いますが、輸血は副作用のリスクも高いため基本をしっかり理解しておくことが大切です。
正しい輸血を行う3つのポイントを理解しておくことでスムーズに対応することができますよ!
輸血の目的
不足した血液を経静脈的に補うため
輸血は移植と同じ扱いになる
輸血とは、血液成分を体内に入れる臓器移植の一つであり、血中の細胞成分や蛋白成分が減少した時、また機能が低下した時に、その成分を補充し臨床症状の改善を図る目的で行われます。
輸血療法は日本輸血・細胞治療学会によって以下のように定められています。
- 補充療法であり、根本的治療ではない
- ヒト血液(同種の細胞)を入れることは臓器移植と同様の医療行為である
- 必要な血液成分のみを使用することが原則である
- 治療目標を設定し、補充量と補充間隔を決め、臨床症状・検査値から有効性を評価すること
- 輸血を安全に行うためには実施管理体制の整備、輸血実施手順書を遵守すること
これらに沿って治療を行わなければなりません。
難しいことが書いてあると感じる人もいると思いますが、輸血という治療法は臓器移植と同じくらい重要な治療だから慎重に行うという内容を押さえておけば大丈夫です。
輸血実施前の検査
輸血を行う前には必ずクロスマッチテスト(交差適合試験)などの検査が行われます。
クロスマッチテストの目的は、血液型不適合による重大な副作用を防ぐために行われます。
人の血液型はA型、B型、O型、AB型の4種類存在していますが、組み合わせによっては相性が悪いものがあるため事前に調べておくことが必要です。
輸血前に実施され血液検査は以下の通りです。
ABO血液型試験
検査は、患者の血液と試薬を使用して肉眼で赤血球の凝固をチェックするものです。
原則、赤血球の抗原をチェックする「オモテ試験」と血清中の抗体をチェックする「ウラ試験」を行い、2つの結果が一致することで最終的にABO型が判断されます。
Rh血液型D抗原検査
Rh血液型にか関わるD抗体の有無を検査するときは、抗D抗体と反応させる検査の他に、偽陽性が出ていないかの確認のためのRhコントロール試薬を反応させる対象試験が行われるます。
不規則抗体スクリーニング
血液型にはA型には抗B抗体などのように抗体が存在しているが、特定の抗原に対して規則的に存在する抗体を規則的抗体と言います。
輸血経験のある人や妊娠、出産経験のある人は不規則抗体と言って規則的抗体に反して存在する抗体を持っている可能性が2%程度あるため、輸血後の溶血を防ぐためチェックを行います。
交差適合試験(クロスマッチ)
溶血性副作用を防止するための最終的な試験です。
実際に患者の血液と輸血用血液との反応をみるクロスマッチ検査を行い、抗原抗体反応を起こさないか製剤1パックごとにチェックを行います。
輸血の必要物品
- 血液製剤
- 輸血伝票
- 交差適合試験票
- 輸血ルートセット
- 注射針
- 生理食塩水
- アルコール綿
- 駆血帯
- 処置用シーツ
- 絆創膏
輸血の手順
1.交差適合試験結果報告書をもって検査室へ行く。
POINT払い出し伝票を受け取り、交差適合試験結果報告書と輸血製剤の3つが一致しているかダブルチェックを行う。
2.病棟に戻ったら同様にダブルチェックを行う
POINT検査室で行った項目と同様にダブルチェックを行う。
3.輸血バッグを静かに振って内容物を混和させ、輸血セットを開封して輸血ルートに接続する。
4.輸血バッグを点滴棒につりさげ、点滴筒を軽く押して血液をルートに満たす
5.患者さんの確認を行う
POINT本人確認はネームバンドも含め必ず行う。
6.16G~20Gでラインを確保する。
POINT22Gでも良いとされているが急変時を考えて20G以下で確保することが望ましい。輸血は原則単独ルートで行う。
7.輸血を接続したら開始前にバイタルサインを測定
8.最初の10~15分間は1ml/分で滴下させる
9.輸血開始から5分は副作用が出現しやすいためベッドサイドで観察を行う
10.15分以上経過した時点で異常がなければドクターの指示に応じて5ml/分程度に早める
11.バイタルサインは開始直後、5分後、10分後、15分後、終了直後に測定して記録する。
輸血の観察項目
全身状態
バイタルサイン、表情、言動など
刺入部位
出血、疼痛、腫脹、漏れの有無
輸血のポイント
輸血を実施する時は、必ずダブルチェックを行い、取り違えなどのミスがないようにしなければなりません。
ダブルチェックは、輸血を受け取る時、輸血を実施する時にそれぞれ違う人と伝票と血液製剤を照らし合わせて実施します。
ダブルチェック項目は以下の通りです。
- 患者氏名
- 生年月日
- 施行日
- 血液型
- 血液製剤名
- 照射(Ir)の有無
- 輸血量(単位)
- 製造番号
- 最終有効期限
- 血液製剤の性状を確認
輸血は移植と同じ扱いであり、取り違えにより投与されてしまうと命に関わる事態になってしまいます。
慣れない間は、1回1回丁寧にダブルチェックを実施しながら慎重に行いましょう。
輸血の扱いに慣れてもダブルチェックは外せない項目なので、しっかり行いましょう!
安全で正しい輸血を行うために
輸血と聞くと難しいイメージがあり苦手意識を持っている人も多いと思いますが、輸血は患者さんの命を救う必要な処置です。
間違えたらどうしよう、何か起きたらどうしようと不安に感じる新人看護師もいるかもしれません。
ミスを防ぐためには、正しい手順を知っておくことが必要です。
ダブルチェックを徹底して医療事故を起こさないように実施しましょう!
輸血についてもっと深く学びたい人におすすめの参考書
輸血についてもっと詳しく学びたい人には、こちらの参考書がおすすめです!
輸血についてもっと詳しく学びたい人には、「輸液・輸血指示の根拠とコール対応の見きわめ方」の本がおすすめです。
「なぜ輸血の指示が出たのか?」という視点から根拠を勉強できる内容になっているので、新人看護師の勉強にオススメの1冊です。
輸血指示の根拠が症状別に紹介されているのでイメージしやすく、臨床で活かせる知識を身につけることができます。
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